「新・方法」第63号

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「新・方法」第63号

寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第63号をお届けします。今号の寄稿者は、アーティストの大和田俊さんです。

[寄稿]

「歯科治療をへて」
大和田俊(アーティスト)

最近、歯の治療を行なった。かつての治療で残った神経が原因で、知覚過敏になってしまったからだ。ちいさな刺激が増幅され、下顎を垂直に下降するような痛みから逃れることができなくなり、渋々歯医者へ向かった。歯科医によると、こうなった場合は神経を抜くのが一番だが、血液や栄養が届かなくなるため歯は脆くなる。よってまず神経を抜き、その後物理的な補強をする必要がある。局所麻酔を行い、小さな土木工事のような方法で、人知れず温度や圧力を感じ取っていた神経を除去する。そして歯から知覚の機能が取り除かれ、痛みがなくなるというのが治療の流れだ。

治療はそれ自体で症状とは別の痛みを生じさせるが、麻酔によって知覚が人為的にキャンセルされると、私の口内環境は物の集合として扱われることが可能となる。治療が終わってしばらくすると麻酔の効果は減衰し、弾性的に日常が回帰する。

ここで思い出されるのが、2000年代初頭のソフトウェア・シンセサイザーだ。現在にくらべて非力な当時のパーソナル・コンピュータ上では、発音命令から実際の発音までに、音響合成のための演算が行われることによる遅延が生じる。聴覚上はたんに発音遅れと感じられる時間の隔たりの内で、演算が行われ、それが畳み込まれながら、減衰しつつ聴覚システムに到達する。私たちは、ただそのあいだを受動的に待機するほかない。この遅延は、原理上除去することは不可能であるが、現在の高速なコンピュータの上ではほとんど意識されることはなくなった。これは、実用上歓迎すべきことだが(コンピュータが生楽器とのアンサンブルに導入された一因でもある)、私には能動的であるような聴取と受動的な待機が重なり合う、この局所麻酔のような時間についてこそ考える必要があると思われる。

[新・方法主義者のウェブ作品]

- 平間貴大

私とは関係ない...

http://hrmtkhr.web.fc2.com/new-method/063_j.html

解説なし

- 馬場省吾

矢印記号 第六番

http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/063_j.html

矢印記号は多くの国で使われている、方向を示す共通記号である。方向を示す記号は、デジタル内に空間性を生み出す。本シリーズでは矢印記号を規則に従って並べ、視覚的に空間性を作り出す。

- 皆藤将

ナンとピザの邂逅

http://masarukaido.com/newmethod/b063_j.html

ナンとは、インド、パキスタン、中央アジアなどで食べられるパンである。ピザとは、小麦粉を練って丸く薄く伸ばした生地に、トマトソース、サラミ、チーズなどをのせて焼いたイタリア発祥の料理である。ナンピザとは、ナンを生地に使ったピザである。昨年より日本の某インド料理屋で新メニューとして提供されている。

[お知らせ]

- 「『展示』してもらえる!」 http://7x7whitebell.net/new-method/bicycle_j.html

- 「新・方法」はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/new-method/

- 平間貴大はウェブサイトを更新しました。 http://qwertyupoiu.archive661.com/

- 馬場省吾はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/

- 皆藤将はウェブサイトを更新しました。 http://masarukaido.com/

- このEメール機関誌の配信をご希望のかたは新・方法主義者にご連絡ください。

- このEメール機関誌は転送自由ですが、著作権は放棄されていません。

- このEメール機関誌が迷惑メールに分類されてしまうことがあります。お気を付けください。

[編集後記]

先日配信した「『展示』してもらえる!」で展示してもらった作品は、残念ながら入賞することが出来ませんでした。入選を逃し自分たちの力不足を実感しておりますが、新・方法一同、精進していきますので今後もよろしくお願いいたします。(新・方法)

発行人

平間貴大 @qwertyu1357

馬場省吾 @shogobaba

皆藤将 @kaido1900

機関誌「新・方法」第63号 日本語版

2018年8月4日発行

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