「新・方法 大個展 ~日曜大工~」リポート

去る2015年7月25日(土)、26日(日)、「新・方法 大個展 ~日曜大工~」が東京三ノ輪のspace dikeで開催されました。初日にオープニングパーティーが開催され、翌日にはクロージングパーティーが開催された本展。夏の夜空に咲く大輪の花火のように、一瞬の輝きを残して閉幕した大個展の模様をリポートいたします。

フライヤー01フライヤー02

「新・方法」とは

平間貴大、馬場省吾、皆藤将の3名の新・方法主義者からなる「新・方法主義」を標榜するグループ。2010年9月4日に平間、馬場、中ザワヒデキの3名によって結成され、2012年2月に中ザワが脱退、皆藤が新たに加入し、現在に至る。本展は新・方法にとって2年ぶり3度目の個展。
新・方法 HP

space dikeとは

写真家の畔柳寿宏さんと畔柳佐季子さんが運営するスペース。2009年~2012年に北区王子で運営していた写真自主ギャラリーwawonの建物が改築されるのを機に、三ノ輪に場所を移す。元は下町の工場で築30年以上が経過していたが、セルフリノベーションを経て、2014年3月にspace dikeとしてオープンした。新・方法に展示を依頼した理由について畔柳夫妻は、「パフォーマンスや配信作品を発表するだけでなく、発表した作品を定着させることも考えてもらえたらと思い声をかけました」と話してくれた。
space dike HP

テープカットで開幕「新・方法 大個展 ~日曜大工~」

2015年7月25日(土)快晴。湿度75%。風速3m/s。東京都心は最高気温33.1℃を記録したこの日、新・方法 大個展 ~日曜大工~ は初日を迎えた。

初日は、13時からテープカットを行うことが事前に告知されていたため、13時前に会場に向かう。地下鉄三ノ輪駅から歩くこと約5分。そろそろ会場が見えてくるはず…おや、あれが会場かな…と思った瞬間、目に飛び込んできたのは、なんと全長3m近い大きな花輪!

花輪
新・方法から新・方法へ送られた花輪。実はこの花輪も作品のひとつ。当初は2.5m程度のものが届く予定だったそうだが、届いてみたら予想以上に大きく、急きょ展示位置をずらしたそう。だが、結果的に「大個展」にふさわしく華々しい外観となった。

会場に入ると、新・方法の3人がスーツに着替えている最中。テープカットに臨むためだけに、わざわざスーツを着こんでいるのだ。大個展にかける新・方法の意気込みが伺い知れる。

テープカット用ハサミ
テープカット用のハサミと白手袋もしっかり用意されていた。

12時50分。テープカットに合わせ、会場にはチラホラとお客さんが集まり始める。
12時55分。スーツに着替えた3人が会場前に現れ、テープカットの準備を始める。紅白のテープをdikeの壁に貼り付け、テープの準備はOK。テープカットの際に音楽を流すかどうかで意見が分かれる新・方法。結果、用意したファンファーレの音量が小さかったため流さないことになった。
12時58分。そうこうしているうちにテープカット2分前となる。dikeの前にはテープカットを待つお客さん。予行演習をする新・方法。カットの掛け声をどうするかしばし協議。
13時00分。一度会場内に戻った新・方法が再び会場前に現れる。

テープカット01
「新・方法 大個展 ~日曜大工~ オープンします!」の掛け声とともに、テープが切られた。
(拍手)

テープカット02
こうして無事、「新・方法 大個展  ~日曜大工~」がオープンした。

新・方法のこれまでの歩みを振り返る――レトロスペクティブ新・方法

配信やパフォーマンスといった形で作品を発表することの多い新・方法にとって、今回の大個展は、過去の作品を振り返る回顧展的な要素も併せ持つ。会場には、「新・方法主義宣言」など、新・方法の歴史を語る上で欠かせない作品群が展示され、新・方法のこれまでの歩みを一望できる貴重な機会になった。簡単にではあるが、展示作品について紹介していきたい。

「宣言」

宣言01
新・方法が2010年~2014年にEメールで発表した宣言を壁面の右側に展示。
新・方法主義宣言』(2010/9/4)、『新・方法主義第二宣言』(2011/9/4)、『新・方法主義第三宣言』(2013/9/4)『新・方法主義じゃんけん宣言』(2013/9/4)、『新・方法主義第四宣言』(2014/9/4)

新・方法主義宣言
『新・方法主義宣言』2010年9月4日に平間、馬場、中ザワによってEメールによって発表された宣言。

新・方法主義第四宣言01新・方法主義第四宣言02
「新・方法は、新・方法である」を40カ国語で表記した『新・方法主義第四宣言』は、40カ国語すべての言語が印刷して貼りだされた。

新・方法主義第三宣言
展示台に積み上げられる形で展示された『新・方法主義第三宣言』。日本語版では日本語辞書の全ての単語が、英語版では英語辞書全ての単語が、同語反復の文体で記されている(例:日本語版は「足は、足である」、英語版は「A is A.」)。和文は総ページ数4,668枚、英文は960ページにも及ぶ。なお、本展フライヤーのメインイメージである図面は、本作が展示されている展示台の図面である。

「配信した作品」「配信作品やパフォーマンスに用いた衣装、小道具などの資料」

配信作品、衣装、小道具
過去に配信した全作品と、作品やパフォーマンスに使用した衣装などの資料を展示。作品は不定期で配信されており、2015年8月末現在、30作品を配信。すべて新・方法のサイトから閲覧可能。新・方法メンバーが滝にうたれた『苦行』や、ハッカー集団「アノニマス」が渋谷で清掃活動を行った日に、小田急線・渋沢駅で同様の活動を行った『街頭清掃作戦』など、体を張った(?)作品も多い。

配信作品(部分)01配信作品(部分)02
配信作品(部分)

小道具、衣装01小道具、衣装02小道具、衣装03小道具、衣装04
衣装、小道具などの資料

抜き打ちテスト01抜き打ちテスト02
中ザワヒデキさんが立教大学で開講した講座『「方法」と「新・方法」』に、新・方法がゲストとして参加した際に行った『抜き打ちテスト』の現物。「新・方法検定」とも言えそうな問題が並ぶ。

ジグソーパズル
2013年に、一日かけて行われたパフォーマンス『ジグソーパズル』で組み上げられたパズルも展示されていた。

『コレは写真ではない。』

コレは写真ではない。
ルネ・マグリットの『これはパイプではない』にヒントを得た作品。2011年に企画ギャラリー「明るい部屋」で開催された「フューチャー派『私たちは、これからはコレも写真と呼ぶ』」に出品したものを再展示。「コレは写真ではない。」の文字列は、写真技術を応用した写植(写真植字)の手法で印字されているため、本作もまた「写真」と呼べるはず……?

『History of 美学校』

History of 美学校
2013年に開催された「TRANS ARTS TOKYO 2013」に出展した作品。展示場所が美学校ということで、もともと美学校にあった年表を、誤記や抜けていた部分を加筆修正したものに新・方法のサインを入れて発表した。TRANS ARTS TOKYOでの展示終了後は、美学校に常設展示されている。

「過去に行ったパフォーマンスの記録映像」

記録映像01記録映像02
会場の2Fで期間中上映されていた「新・方法のドキュメント映像リスト」。2010年にpoolで行われた『新・方法主義宣言』に始まり、配信作品『苦行』『苦行2』のドキュメント、先日行われたisland 5周年記念パーティーでの祝賀パフォーマンスまでを網羅。映像はすべてYouTubeの再生リストにて閲覧可能。

これが最新の「新・方法」。本邦初公開の新作!

本展では過去作だけにとどまらず、本展のために制作された新作も展示された。来場者への配付型作品と、今回の個展のタイトルにちなんだパフォーマンスが話題を呼んだ。

『新・方法ノベルティ』

新・方法ノベルティ01
新・方法ノベルティ02新・方法ノベルティ03新・方法ノベルティ04新・方法ノベルティ05
本展のために制作された新・方法オリジナルのノベルティ。タオル、ボールペン、歯ブラシ、グラス。いずれも「新・方法 New-Method」のロゴ入り。一人一品にかぎり持ち帰り自由で、特にグラスは来場者からの人気が高く、早々に品切れになった。

『新・方法クッキー』

新・方法クッキー01新・方法クッキー02新・方法クッキー03
平間、馬場、皆藤の写真がプリントされたオリジナルクッキー。来場者に一枚ずつ配付された。プリントされた3人の写真は、ダダイストのハンス・アルプ、トリスタン・ツァラ、ハンス・リヒターが1917年頃に撮影した写真と同じポーズである。味も美味しく、クッキーとしても良品であると来場者から好評を博していた。

『日曜大工』

日曜大工01
本展の大目玉とも言える新作パフォーマンス。新・方法が展示期間中、大工姿で公開大工制作をするというもの。テープカットのスーツ姿から、事前にスーパービバホーム豊洲で購入したという揃いの大工姿に着替え、2日間にわたって折りたたみ椅子を作り上げた。26日のクロージングパーティー直前に完成した椅子は、space dikeに寄贈された。
言うまでもないが、新・方法主義者の平間によれば、個展タイトルの「日曜大工」は、週末に行われる(英語タイトルは『Weekend Carpenters』)ということと、「space dike」の「dike(ダイク)」にかかっているとのこと。

日曜大工02日曜大工03日曜大工04
完成!

日曜大工05日曜大工06
2日間にわたる大工仕事の疲労を吹き飛ばす笑顔。

まだまだ新・方法。気づけば観客も新・方法の作品に。

ノベルティ、クッキー、過去の全配信作品展示、3m超の花輪……と大盤振る舞いの新・方法であるが、その他にもいくつか仕掛けや催しがあった。新・方法の手にかかると、気づかぬうちに観客もまた新・方法の作品に参加していることがままある。

「祝!来場者10人突破!!」

ウェルカムボード01ウェルカムボード02くす玉
10人目の来場者を祝して、くす玉が割られ、ウェルカムボードとともに記念撮影が行われた。新・方法の用意周到ぶりが素晴らしい。

「オープニングパーティー」

オープニングパーティー01オープニングパーティー02
多くの人が詰めかけた初日のオープニングパーティー。お酒やおつまみを片手に作品を鑑賞したり、談笑をしたり。普段なかなか聞くことのできない質問を、新・方法主義者に直接聞ける貴重な機会だった。折しも当日は、隅田川花火大会。時折、会場の外で花火を眺めながらのパーティーとなった。

「クロージングパーティー」

クロージングパーティー01クロージングパーティー02
展示2日目にして開催されたクロージングパーティー。2日間にわたる大工作業で、若干疲労気味の新・方法を労いに、初日同様多くの人が会場を訪れた。

こうして無事閉幕した「新・方法 大個展 ~日曜大工~」。新・方法のこれまでの歩みを知ると同時に、期待を裏切らない(上回る)新作に、これからの新・方法の活動がますます楽しみになった人も多いのではないだろうか。新・方法の最新の活動をチェックされたい方は、隔月で配信されているEメール機関誌「新・方法」がお薦め。配信希望の方は、新・方法主義者へ連絡を。

また、大個展の様子は下記サイトにもまとめられている。大個展に参加できた方もできなかった方も、あらためて展示を追体験してみてほしい。まとめサイトも新・方法の作品のひとつに思えるような気がしてくるから、新・方法は面白い。


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