寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第8号をお届けします。寄稿者は、現在、東京藝術大学大学院にて自動作曲の研究を行っており、(旧・)方法主義者の共作「方法ばばぬき」に関する論文をかつて執筆された田中翼さんです。
2011年3月、七針(東京)でのパフォーマンスイベントの一部として、新・方法の「新・方法ばばぬき」の自身による初演が行われた。旧・方法の「方法ばばぬき」と同時上演される意味深なプログラム立てであり、新作には一体どのような「新趣向」がこらされているのか、期待とともに足を運んだ人も多かったに違いない。だがその期待は見事に裏切られた。なんと「新・方法ばばぬき」は単なる「ばばぬき」でしかなかったのだ。にもかかわらず、ある種の充実した作品経験がそこにはあった。
イベントの初めに行われた「方法ばばぬき」は「ばばぬき」にルールを一つ付加することで「ばばぬき」の本質を変化させた作品である。初めて観る観客は付加されたルールを知らないため、普通の「ばばぬき」との違いを見極めようとし、そのうち「カードの引かれる場所が一番端と決まっており、引いたカードは反対の端に常に収められる。カードの並び方は動かさない。」という規則に気づく。実はプレーヤー達は選択の自由のない不気味な「ばばぬき」をしていたのであり、ばばを引くかどうかは選択次第というゲームの本質が一変する。これを観てしまうと「新・方法ばばぬき」にも何か新しいルールがあるはずだと、つい期待してしまう。
このような観客の心理状態が作られた後で「新・方法ばばぬき」は行われた。観客は何番目のカードが引かれるのか、プレーヤーが何かサインを出しはしないか等と仮説を立てては反証されるという繰り返しを頭の中で繰り広げていたことだろう。一方でプレーヤー達はカードを一枚だけ上に突き出してみたり、フェイントをかけたりして「新・方法ばばぬき」なるものを楽しそうに行っていた。微笑ましいのだが、残り枚数が少なくなるにつれ、観客は「ルール」を理解できていないことに苛立ちと焦りを覚える。そんな中、目を疑う事が起こった。プレーヤーの中ザワが自分のカードの並び方をこれみよがしに乱してしまったのだ!!そんな事をしたら「新・方法ばばぬき」たらしめる「ルール」が崩れてしまう!!反則?…いやまさか…「ルール」が無いなんてことは…
こうして最後の仮説が立てられた頃、ゲームは終了し、イベントも終了となった。このように「新・方法ばばぬき」は、観客が「方法ばばぬき」に付加されていたようなルールが「無いということ」を認識するに至る心理的プロセスとして構成された見事な時間芸術であった。そしてそれを可能にしたのは、先立つ「方法ばばぬき」の上演と、プレーヤーのもつ自由な「演奏の領域」という作品の外部である。
(参考) 「方法ばばぬき」における非対称性を利用したゲーム回数の確率的制御
http://7x7whitebell.net/new-method/oldmaid_j.html
猫
http://hrmtkhr.web.fc2.com/new-method/008_j.html
猫とは、ネコ目に分類される哺乳類の一種である。
哺乳類とは、生物の分類区分の一つである。
世界中でペットとしても飼育されている。
6本の線の順列による720回の移動
http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/008_j.html
6種類の要素の順列は時系列的に捉えることによって、右移動・左移動・定位のいずれかとなる6本の線と捉えることができる。それは1行を同時に発現させることで、音楽における対位法として成立する。
ソースと実行第四五 - 五〇番
http://aloalo.co.jp/nakazawa/newmethod/b08/j.html
ウェブ頁が二つ与えられたとする。それらのウェブ頁には、他頁あるいは自頁のどちらか片方、あるいは両方へのリンクが置かれるものとする。可能な二頁の組み合わせは六通りである。鑑賞者は両頁間のトグルを強制されたり、一回だけ他頁に移動できたり、自頁をクリックし続けるしかなかったり、他頁と自頁のどちらかを選択する自由に恵まれていたりする。
- 「豊嶋康子「運動/オッズ」」 http://7x7whitebell.net/new-method/mo_j.html
- 「新・方法」はウェブサイトを更新しました。http://7x7whitebell.net/new-method/
- 平間貴大はウェブサイトを更新しました。http://hrmtkhr.web.fc2.com/
- 馬場省吾はウェブサイトを更新しました。http://7x7whitebell.net/
- 中ザワヒデキはウェブサイトを更新しました。http://aloalo.co.jp/nakazawa/
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機関誌「新・方法」第8号 日本語版
2011年5月4日発行