寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第47号をお届けします。今号の寄稿者は、音楽家であり、かつて「P3 art and environment」でサウンド・インスタレーション関連の企画に携わっていた村井啓哲さんです。
新・方法のことをよく知らない。ただいくつかの催しを見たに過ぎない。そのいくつかのことも実はよく憶えていない。しかし今、ここには一本のボールペンがあって、側面に「新・方法」と刷られている。このささやかな品は今年の夏の形見となった。「大個展」来場の記念品として用意されていた四つの品のひとつから、これを選んだことが思い出される。質素な透明ガラスのコップに、やはり「新・方法」と刷られたものもあったが、あまりにも作品めいて見えることが気がかりで、思わず避けた。今ではそれを少しだけ後悔しているのだが、もう帰らないあの夏の日。会場の壁にはこれまでの全活動記録が掲示され、新・方法の三名は白い長袖のタイトなTシャツと紺の作業ズボンを履いて並び立ち、作りかけの椅子を示して、完成をできるだけ引き延ばそうとしていた。あれは確か日曜日で、彼等の装いは大工、会場の名前もdikeだった。この眩いばかりに愚かしくも健気な真空の誠実さが、彼等を美しくしていた。
自分の記憶はいつも確かではない。時間の経過と共に、すべて音のように消えていく。約束は書き付けばかりを頼りにしている。確かなものが何かひとつでもあれば、それを支えに記憶を紡ぎ出すことができる。ただ一本のペンでさえ忘却の必然に抗う助けとなる。名前ひとつだけでもよいのだ。
バイナリデータ表示 第二番
http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/047_j.html
人間の視覚のためのメディアであるHTMLをバイナリ表示することは、視覚表示のための視覚表示として、無限後退を引き起こす。
本作では、私のウェブ作品「重層的記号行列 第一番」のウェブページの、バイナリデータを十六進数にて表示している。
(参考)「重層的記号行列 第一番」http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/041_j.html
アイガーの標高の素因数
http://masarukaido.com/newmethod/b047_j.html
スイス中部に位置するベルニーズアルプスの一峰で、その険しい北壁で有名なアイガーの標高の素因数を求めた。そしてその数字を印刷し額に入れ飾った。
- 「新・方法」はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/new-method/
- 平間貴大はウェブサイトを更新しました。 http://qwertyupoiu.archive661.com/
- 馬場省吾はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/
- 皆藤将はウェブサイトを更新しました。 http://masarukaido.com/
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今回の寄稿に新・方法を指して、「眩いばかりに愚かしくも健気な真空の誠実さ」とあります。
以前には、第22号に寄稿して頂いた山本桜子さんに「明晰で快活で些かの暗さもましてやルサンチもなく全く無理なく非人間的である(ように見える)」と形容されたこともありました。
https://twitter.com/saqrako/status/255117293154078720
どちらも新・方法とその活動をよく表しているように思います。(M)
平間貴大 @qwertyu1357
馬場省吾 @shogobaba
皆藤将 @kaido1900
機関誌「新・方法」第47号 日本語版
2015年12月4日発行