寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第51号をお届けします。今号の寄稿者は、作家、キュレーターとして、「近代」において成立した様々な装置を現代の環境において再構築すること、をテーマとした展覧会のキュレーションや論考の執筆をされている上妻世海さんです。
カントは認識そのものではなく認識の前提条件へと遡行することで、認識の前提として時間、空間、そして12のカテゴリーを発見する。ドゥルーズはカントにその方法論を学び、更に時空間とカテゴリそのものの発生条件を問う。そして、彼は「出来事」という特異性だけが超越論的要素であり、それこそがカントの超越論的な原理、あるいは別の仕方での超越論的原理を発生させると考えた。つまり、出来事との出会いによって、一つの画一化された記述とは別のなにかへの生成変化の道を切り開いたのである。カントは人間の認識の条件を問い、ドゥルーズはその条件の発生条件を問うた。つまり、ドゥルーズは認識以前の存在論的な生成の場を発見したのである。
現代の思想はドゥルーズの発見した存在論的な生成の場から始めることで、人間と世界との相関性を特権的な地位から引きずり堕ろす。その方法は複数ある。人間の経験の記述は人間的な尺度で切り取られたものにすぎないのだから実在するとはいえず、数学的構造だけが実在するという消去主義的解決から、人間の相関メディアを特権的に扱わないことで、全てのオブジェクトを等しく扱う汎心論的解決、アマゾンの部族やアメリカインディアンの存在論を近代的な存在論と併置させることで存在論的なカテゴリーを複数化する「人類学における存在論的転回」など様々である。
紙面の問題で詳しくは書けないが、現代思想はここに来て、近代が産み出した「人間」と「世界」の安定した関係に対して疑問を突き付けている。僕の関心は「人間」や「世界」の再定義や再構築である為、この潮流は僕を知的に興奮させ続けると共に、身体すら動かしてくれる。
バイナリデータ表示 第六番
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アウトドア製品への憧憬
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機関誌「新・方法」第51号 日本語版
2016年8月4日発行