「新・方法」第56号

to English

「新・方法」第56号

寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第56号をお届けします。今号の寄稿者は、批評家であり、5月に発刊された批評誌『アーギュメンツ#2』の編集を務めた黒嵜想さんです。

[寄稿]

方法だけでは足りない
黒嵜想(批評家)

組織的犯罪処罰法改正案。通称「共謀罪」とされるこの法案が、衆院本会議で賛成多数で可決、衆院を通過した。同法案は、テロリズムへの警備を主な口実として、組織犯罪を計画段階で摘発できる。つまり原理的には、「疑わしき」集団を恣意的に摘発できてしまうとして、強い批判の声が上がっているようだ。

筆者は京都に住んでいる。この数年ほどで、ここでの生活環境に大きな変化があった。それは、観光客への空き部屋貸し出しの増加だ。京都市はここ数年連続で、過去最高の観光客数を記録しているようだ。この傾向に伴って、筆者周辺の空き家あるいは借家には、毎日顔の違う集団が出入りするようになった。おそらくこれらの住居は、宿泊施設として観光客に貸し出されているのだろう。

反対の声も少なくない。既存の旅館、ホテル業者からの強い反発ももちろんだが、一部の地域では「民泊反対」の旨が書かれたビラの配布されたこともあった。しかし原理的には、個人的な関係に基づいた、局所的な誘致を禁じることはできない。「友達」を自宅に泊めることに反対される謂れはないのだ。

新しい警備。新しい誘致。いわゆるSNS以後、私たちは膨大な数の人間関係を一元化することでストックできている。だがそれゆえに、当人以外には確たるリンクの見えない、不気味な集団を作っている。原理的に追求される、新しい方法の可能性、危険性。一元化された関係性に引き裂かれた、二つの原理論にどう介入しうるのか。批評と実作の交差点はここにある。

[新・方法主義者のウェブ作品]

- 平間貴大

作品なし

http://hrmtkhr.web.fc2.com/new-method/056_j.html

私は機関誌「新・方法」第56号で作品を発表しない。

- 馬場省吾

意味と表示 第五番

http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/056_j.html

ウェブで使用されるHTMLは、文/単語/文字に対して、表示されている記号とは独立した意味を与える。この作品は、HTMLによって意味を与え、意味の錯乱を起こさせる。今作では、「新・方法」のウェブページの意味を変える。
(参考)「新・方法」ウェブページ
http://7x7whitebell.net/new-method/index_j.html

- 皆藤将

ただアンダーなだけ

http://masarukaido.com/newmethod/b056j.html

最近カラーネガで写真を撮る機会が多い。露出補正の効かないAEのコンパクトカメラを使っているので、暗い環境ではアンダー、つまり露出不足となり、暗くて何も写っていない状態のプリントができあがる。暗い状況で撮っているのであれば黒っぽい写真になるはずだが、プリント時に適正露出になるように補正がかけられているため、ノイズ混じりのグレーの写真となる。
ま、そんなことはフィルム写真が一般的な時代であれば、敢えて書く意味もないことだろう。

[お知らせ]

- 「新・方法」はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/new-method/

- 平間貴大はウェブサイトを更新しました。 http://qwertyupoiu.archive661.com/

- 馬場省吾はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/

- 皆藤将はウェブサイトを更新しました。 http://masarukaido.com/

- このEメール機関誌の配信をご希望のかたは新・方法主義者にご連絡ください。

- このEメール機関誌は転送自由ですが、著作権は放棄されていません。

- このEメール機関誌が迷惑メールに分類されてしまうことがあります。お気を付けください。

[編集後記]

新・方法の三名が発起人になっている「人工知能美学芸術研究会」は、2017年5月に一周年を迎えました。http://aloalo.co.jp/ai/f_a.html(新・方法)http://aloalo.co.jp/ai/f_a.html (新・方法)

発行人

平間貴大 @qwertyu1357

馬場省吾 @shogobaba

皆藤将 @kaido1900

機関誌「新・方法」第56号 日本語版

2017年6月4日発行

戻る