寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第30号をお届けします。今回は、先号の寄稿者である阿部謙一さんに、先月われわれが行った「5,849円」展についてご寄稿いただきました。
予め断っておくが、ここに展開するのは、展示風景写真と現場で配布されたテキストを入手したうえでの見解である。
端から気になったのは、展覧会タイトルでもある競売落札額の「5,849円」である。真意の忖度など無粋であろうが、素数による終結は、いかにも新・方法らしい着地に思えて興味深い。
それにしても、「新・方法オークション」という「作品」には、彼ららしい謎が多く残されている。
例えば、「出品から落札までの一連の流れ自体を作品とした」というが、その後の金庫の購入、残額の収納、鍵の紛失といった落札金の運用法のほうが、むしろコンセプチュアルな様相を呈している。
しかも、落札者は代価として「落札証明書」なるものを受け取ったのみで、入札者の目的、つまり何を獲得しようとしていたのかすら判然としない。鍵の開かない金庫は、新・方法によって保管されているからだ。
こうした実践を含めてこそ、一般に思い描く「作品」といえそうだが、彼ら流のレトリックに則るならば、「落札以降の行為」は「落札以降の行為」でしかない。また、落札金は新・方法の活動資金となったと判ずることも可能だが、そうした部分も含め、我々はいったんそのままに受容すべきで、殊更に追尋すべきではないのであろう。
そんなこんなの一方で、「鍵の紛失」のくだりを契機に、「シド・アンド・ナンシー」のDVDを見直したことを付記しておく。結果的に、本論には無縁のものであったので、単に筆者の嗜好を露呈させるためだけの告白であり、無論、蛇足は承知である。
入力と出力 第六番
http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/030_j.html
「入力と出力」第一番~第五番までは、入力のヴァリエーションが示されたが、第六番以降は、異なるメディアでの出力のヴァリエーションが示される。入力はこの説明文自体である。
数字と時間
http://masarukaido.com/newmethod/b030_j.html
本作品には77という数字が書かれており、本作品ページを表示してから77年経過すると別のページにリダイレクトする。77という数字は三船敏郎の寿命からとっている。別のページにジャンプする瞬間を見るために、この作品を77年間鑑賞し続けてもいいが、あなたの寿命や表示機器の寿命、WEB環境の変化などにより、恐らくその瞬間を見るのは不可能だろう。
- 新・方法「5,849円」展 http://7x7whitebell.net/new-method/5849yen_j.html
- 「新・方法」はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/new-method/
- 平間貴大はウェブサイトを更新しました。 http://hrmtkhr.web.fc2.com/
- 馬場省吾はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/
- 皆藤将はウェブサイトを更新しました。 http://masarukaido.com/
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皆藤将は「5,849円」展の一方で、美學校番頭として五つの展覧会の舵を取っていました。個人それぞれの活動にも注目です。 (M)
平間貴大 @qwertyu1357
馬場省吾 @shogobaba
皆藤将 @kaido1900
機関誌「新・方法」第30号 日本語版
2013年5月4日発行