「新・方法」第40号

「新・方法」第40号

2014年9月4日、「新・方法」は「新・方法主義第四宣言」を発表しました。この日をもって、「新・方法」は結成4周年を迎えました。
尚、機関誌「新・方法」は今後も日本語版と英語版のみの配信を予定しています。
寄稿と作品からなるＥメール機関誌「新・方法」第40号をお届けします。今号の寄稿者は、本誌第1号、第23号、第34号、の寄稿者でもある、本誌4度目の登場となるギャラリスト・翻訳者の松下学さんです。

[寄稿]

他の誰かが考える
松下学（ギャラリスト・翻訳者）

2014年9月4日の新・方法主義第四宣言は「新・方法は、新・方法である」という同語反復的な自己規定文を40言語に翻訳している。この40言語は翻訳者の有無に基づいて選ばれたらしく、機械翻訳で単に数を稼ぐのではなく、あくまで人間が翻訳することに意味があることがわかる。

翻訳とは与えられたテキストを別の言語という参照体系に再現することを使命とする。しかし言葉は本質的に隠喩であり、思考は常に不本意なブリコラージュとして編み上げられる。思考と言葉が一致する魔術的瞬間は、翻訳を待つことなく、著書自身の言語化によりすでに失われている。翻訳すべき言葉の意味は自明ではなく、その意味を再び言葉にする翻訳者自身の言葉もまた自明ではない。その限界を知りつつ、何をどう翻訳すべきかを翻訳者は考える。これが1923年から未だ決着のつかない古典的な「翻訳者の課題」だ。

ここに機械翻訳と人間による翻訳の差が生まれる。機械は考えない。言葉を自明なデータとして信頼し、忠実に変換する。人間は考える。成否はともかく、言葉の自明性を問い、著者の思考と読者の読解を想像し、様々な可能性を調停する。優劣はさておき、思考の有無は常に明白だ。

新・方法が翻訳者に発注したのは、人間が機械より優れているという信頼ではなく、無意味かもしれない宣言の意味を他の誰かに考えさせるためだろう。考えない機械では役に立たないが、翻訳者は確実に考える。そして翻訳者の思考は、どれほど誠実なものであろうと、単なる思考のジェスチャーとなり、宙吊りなままの宣言の意味について代理人を立て自らは思考を放棄する新・方法の形式的な行動の部品となる。

[新・方法主義者のウェブ作品]

[お知らせ]

- 「新・方法主義第四宣言」 http://7x7whitebell.net/new-method/manifesto4/manifesto4_jpn.html

- 「新・方法」はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/new-method/

- 平間貴大はウェブサイトを更新しました。 http://qwertyupoiu.archive661.com/

- 馬場省吾はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/

- 皆藤将はウェブサイトを更新しました。 http://masarukaido.com/

- このＥメール機関誌の配信をご希望のかたは新・方法主義者にご連絡ください。

- このＥメール機関誌は転送自由ですが、著作権は放棄されていません。

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[編集後記]

寄稿者の松下学さんには宣言が出されるたびに執筆をお願いしています。合わせて過去の寄稿を読んでいただくことをお勧めします。
第1号 http://7x7whitebell.net/new-method/bulletin/b001_j.html
第23号 http://7x7whitebell.net/new-method/bulletin/b023_j.html
第34号 http://7x7whitebell.net/new-method/bulletin/b034_j.html

松下学さんの主宰する棚ガレリはこちらです。
http://tanagallerybookshelf.com （Ｍ）